低分子キナーゼにおけるATP対GTP選択性の原子的機構

Der Per Rogne, Senior research engineer at Department of Chemistry, Umeå University, Sweden

Time and place: 2018年5月11日 12:00~13:00 ビクベン、クリスティーン・ボンネヴィス・フス

Foto: UMU.se

アデニル酸キナーゼは、アデニル酸三リン酸(ATP)をリン酸供与体としてアデニル酸一リン酸(AMP)の可逆的リン酸化を触媒し、細胞内のエネルギーバランスを制御する必須のハウスキーピング酵素である。 もし、リン酸供与体であるATPが類似体であるグアノシン三リン酸(GTP)に置き換わると、活性は2桁も減少する。 細胞内にはATPが3 mM、GTPが0.5 mMと同程度の濃度で存在する。 しかし、ATPとGTPは細胞内で非常に異なった役割を担っている。ATPは細胞内の主要なエネルギー運搬体であるのに対し、GTPは多くのシグナル伝達経路において特異的な役割を担っている。
NMR、X線結晶構造解析、有機合成を組み合わせた研究により、AdkのGTPに対するATPの選択性の分子基盤を明らかにすることが出来ました。 その結果、AdkはATPとほぼ同じ強さでGTPと結合することを明らかにしました。 しかし、この結合は触媒的に阻害された状態で結合する。 一方、ATPとの結合は、Adkに大きな活性化構造変化を引き起こす構造で結合する。 さらに、生産的なATP結合と非生産的なGTP結合の両方を仲介する結合面は、部分的に同じアミノ酸残基で構成されていることがわかった。 また、新しいATPアナログを合成することで、ATPのアデノシン部分と酵素の骨格との間のたった一つの相互作用を突き止めることができ、これがATPとGTPの結合構造の違いに不可欠であることが分かりました。

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