音声認識閾値（SRT）は主に純音平均（PTA）と聴覚障害の急峻性に関係すると考えられている。 しかし、音声刺激の意味づけなど、知覚的あるいは認知・言語的な要因、あるいはその両方にも影響される可能性が指摘されている。 本研究の目的は、騒音下での音声認識閾値の変化の程度が様々な騒音曝露作業者において、SRTとPTAの対応関係を確認することである。 この目的のため、ケベック州フランス語の流暢な話者で騒音にさらされた労働者から収集した合計807個のSRTとPTAを比較検討した。 音声認識における文脈効果の測定は、SRT評価で見られるような刺激の不確実性が高い条件下では、文脈効果が音素または単語の復元を促進し、SRTとPTAの関係を混乱させるという一般的仮説に基づいて行われた。 主成分分析を用いて、SRTには低周波聴覚感度だけでなく、言語文脈効果も有意に影響することを見いだした。 この言語的文脈効果を部分的に取り除く補正を導入したところ、SRTとPTAの相関は増加したが、予測よりも低い値となった。 関連する処理分析では、SRTがPTAよりも8〜16dBのファクターで感度が高い観測結果が多数（807人中230人）見つかった。 これは、2つの測定値の相関が臨床聴覚の分野で一般的に提唱されている範囲内（0.85～0.95）であったにもかかわらず、このような結果となった。 これは、被験者が実際に使用している音声認識課題が、純音の検出と同程度に単純化され、音声理解を容易にするための音韻・語彙文脈効果を示していると解釈された。